【ウロくん】「とうとうボク達の番が回ってきたね」
【ボロちゃん】「やっとワタシ達の番が回ってきたわね」
【ロスター】「ううむ、正直お前らにまでインタビューするとは思っていなかったんだが……」
【アイマス】「おう、ロスター。なんだ、この集まりは? そのけったいなヘビはパーシィの嬢ちゃんが飼ってるヤツだよな」
【ウロくん】「ボク達は飼われているわけではないよ」
【ボロちゃん】「そうよ。ワタシ達はパーシィの可愛い可愛いアストラルファミリアなんだから」
【アイマス】「あすとら……何だ?」
【ロスター】「マスター、これも依頼の一環なんだよ。マスター達にインタビューするのが仕事なんだ」
【アイマス】「ほぉん? また妙な依頼を受けたもんだな。ま、店の宣伝になるなら悪くねぇ。いまは客もいないし、遠慮なく聞いてくれや」
【ウロくん】「ボク達も問題ないよ。ボク達のことを知りたい人達の質問が、いっぱい来ているんだろう?」
【ロスター】「いや、言うほどは……。さすがに女の子と比べるとな」
【ボロちゃん】「あら、女の子だったらここにいるわ」
【ロスター】「ゴホン、そうだったな。それじゃその可愛いボロちゃんとウロくんに質問スタートだ」
【アイマス】「だったらほらよ、口の滑りがよくなるカクテルだ。ヘビ公にはグラスより皿の方がいいか?」
【ロスター】「ありがとう、さすがマスター。細やかな気配りが利いてるな」
【アイマス】「そりゃ探索者なんて偏屈者ばかり相手にしてるんだ。相手の気付いていない欲求まで先取りするのが一流ってもんよ。それより質問始めるんじゃないのか?」
【ロスター】「ああ、じゃあ改めて……。ウロくんとボロちゃんに質問。下半身を共有しているようですが、有性生殖をするのでしょうか?」
【ウロくん】「ボク達に生殖機能はないんだ。というよりそういう生体的な概念から解き放たれた存在というべきかな」
【ロスター】「生き物じゃないっていうことか?」
【ボロちゃん】「アナタ達の言う生き物の定義から外れてしまった、といった方がいいでしょうね。それをしたのが何か……はまだ言うことができないのだけど」
【ロスター】「相変わらず秘密ばかりの謎生物だな……」
【ウロくん】「まあまあ、せっかくのインタビューだ。まだ疑問はあるのだろう?」
【ロスター】「ああ。……どこから来てどこへ行こうとしているのですか?」
【アイマス】「なんだ、随分哲学的な質問が来たな。こんなの面と向かって答えられるヤツがどれだけいるんだ?」
【ロスター】「さて、酔っ払いかよほどの暇人か……。ウロにボロ、どうなんだ?」
【ウロくん】「知っているかもしれないけど、ボク達ウロボロスは円環を象徴する。この世の理は円環なんだ」
【ボロちゃん】「でも、その理の外側に往くことができれば……。ワタシ達は始原の裏切り者であり、そして――」
【ウロくん】「これ以上はまだ話せないな」
【ロスター】「またそれか……」
【アイマス】「ダメだ、何を言ってんのか分からねぇ。大してやらねぇうちから、酔っ払いちまいそうだ」
【ロスター】「じゃあ次はもっと簡単な質問にしよう。どっちかの首が食べれば、おなかいっぱいになるの? 片方ずつ眠ったりもできるの?」
【ボロちゃん】「さっきも言ったように、ワタシ達は普通の生物とはその定義を少し違えた存在よ。食欲や睡眠欲求といったものも、基本的には縁がないの」
【ウロくん】「まあ、その気になれば食べることも眠ることもできるんだけどね」
【アイマス】「おう、さっきからワシの入れた酒をちびちびやってるもんな」
【ボロちゃん】「だって甘くて美味しいんだもの。マスター、さすが分かってるわね。女の子の好きなお酒」
【ウロくん】「……で、彼女が調子に乗って飲みすぎれば、そのツケはボクにも来るんだけどね」
【ロスター】「なるほど、体はひとつということか。その分なら、睡眠は片方ずつ取ることもできそうだな」
【ロスター】「次の質問。ウロくんとボロちゃんは兄妹なの? それとも恋人同士なの?」
【ウロくん】「…………」
【ボロちゃん】「…………」
【アイマス】「お、固まったぞ。さてはこっち方面の話題に弱かったか?」
【ウロくん】「そ、そんなことはないさ。ボク達は血を分けた実の兄妹――」
【ボロちゃん】「そして愛を誓い合った恋人同士――」
【ロスター】「兄妹で恋人同士? それはまた禁断の香りのする……」
【ウロくん】「ふふふ、当然さ。ボク達は2人揃って禁忌を犯した。触れ得ざる叡智に手を……」
【ボロちゃん】「そのせいでこんな体にされ、最も近くにいながら、絶対に想いを遂げることができなくなっちゃったのよね……」
【ロスター】「う……っ、思いがけず話が重くなったな」
【アイマス】「分かるっ。分かるぞ。だから呑め、2匹とも……!」
【ボロちゃん】「マスター……! 優しいわね、アナタ!」
【ウロくん】「それじゃもう一杯いただこうか」
【アイマス】「おう! 一杯と言わず、じゃんじゃん呑んでいきやがれ!」
・ ・ ・ ・ ・
【ロスター】「さて、マスターが飲ませたせいで、2匹とも潰れてしまったわけだが……」
【アイマス】「普通の生物と違うとか、偉そうな口利いてたわりに、案外だらしなかったな」
【ロスター】「仕方ない。ウロとボロは置いといて、マスターに質問タイムと行こう」
【アイマス】「おう」
【ロスター】「酒場の店主として料理を振る舞うとの事ですが、レシピに関して質問があります。 実は、店のメニューには載っていない秘密の裏メニューがあったりしませんか? 具体的には、なんちゃらジェノサイド的な名前の料理なのですが・・・。 存在するようでしたら、一度ロスターさんに試食(実験)させてあげて頂けないでしょうか??」
【アイマス】「……? 裏メニューに心当たりはねぇこともねぇが、ジェノサイドなんちゃらなんて物騒な名前じゃねえな」
【ウロくん】「うーん……ツインテールの悪魔……」
【ボロちゃん】「クッキング……ママ……」
【ロスター】「何かうなされてるようだな」
【アイマス】「ますます分からん」
【ロスター】「次の質問。現役時代の二つ名などあれば是非」
【アイマス】「ワシが探索者として一線で活躍していた頃のあだ名か……。へっ、昔の話だが仕方ねぇ。仲間内では弩竜(どりゅう)とか怒羅魂(どらごん)とか呼ばれていたぜ」
【アイマス】「今となっちゃ、探索者自体がモグラと俗称されてたりするが、あの頃は弩竜といったらワシのことだったんだぜ?」
【ロスター】「なんだか暴走族みたいなあだ名だな……。そもそもマスターの場合、あだ名はともかく本名が知られていないような……」
【アイマス】「あん? ま、細かいことは気にすんな」
【ロスター】「細かくはないと思うが、マスターがそう言うなら次の質問に行くか。マスターの人生のフルコースを教えてください」
【アイマス】「フルコースな。まだ探してる最中だが、カルナスの近海で獲れるマグロを、迷宮の洞窟で採取した岩塩で塩焼きにするのは絶品だぜ。こいつがまたきつい酒に合う」
【ロスター】「おお、店でもたまに出るメニューだな!」
【アイマス】「それから迷宮ヘビの蒲焼だな。これはタレに秘密があってな。そもそもこのタレを完成させるために、俺は迷宮を……」
【ウロくん】「ヘビ……!? 蒲焼……!?」
【ボロちゃん】「いやあぁぁ――っ!!」
【アイマス】「おっと、こいつらがいるのを忘れていたな」
【ロスター】「またお目覚めが遠くなったか」
【アイマス】「面目ねぇ」
【ロスター】「仕方ない。マスターへの質問を続けて行こう。最近の探索者で一番の有望株は誰ですか?」
【アイマス】「実力で言ったら、なんといってもダグの野郎だろうな。ソロであそこまで深く潜れるのは、あいつくらいのもんだ」
【ロスター】「ダグレイか……」
【アイマス】「へっ、悔しそうだな。言っとくが、ワシはお前にも期待してるんだぞ。ダグレイと比べて粗は目立つが、光るモノを持ってる。それに何より仲間に恵まれているからな」
【ロスター】「フォローのつもりか?」
【アイマス】「本音を語ったまでよ。こういう言い方をすれば、ダグレイと張り合ってるお前はもっとやる気になるだろ?」
【ロスター】「ふっ、マスターには敵わないな」
【アイマス】「まあ、ひよっ子達をその気にさせるのも、ワシの仕事のうちだからな」
【ロスター】「ああ、確かに俺はダグレイに負けたくないと思ってる。今は向こうの実力が上ってのも承知だ。だからこそ俺は、アイツに勝ちたい」
【アイマス】「その顔は迷宮に潜りたくて仕方ないって顔だな」
【ロスター】「さすがマスター。お見通しか。おい、ウロ、ボロ、酔い潰れてないで起きろ。これから探索するぞ」
【ウロくん】「ん〜、なんだい、探索って……」
【ボロちゃん】「インタビューは、終わったのぉ〜?」
【ロスター】「聞くべきことは聞いた。おかげでやる気に満ち溢れてる」
【ボロちゃん】「ふぅん、よく分からないケド……」
【ウロくん】「そういうことなら、行かないわけにはいかないね。さぁ、パーシィ達と合流しよう」
【ロスター】「ああ!」