「おかしいのう。もう講義の始まる時間のはずじゃが、シャーリーはどこに行っておるんじゃ?」
「遅刻。刻限になってもやってこない。塔を探索していて。何かあったのではないか」
「おっ、見よルナよ、カラコル号がやってきたぞ!」
「はぁはぁっ、二人ともお待たせー!」
「遅いではないか、シャーリー。心配したのじゃ」
「ごめんなさい、色々立て込んでて。お詫びと言ってはなんだけど、とびっきりの情報を仕入れてきたわよ!」
「期待。そこまで言うからには。驚くようなネタを見せてほしい」
「ええ、それじゃ早速、これを見てみて」
「怪物。このいかにも恐ろしげな。モンスターは一体」
「皇国では樹竜ドラセナリアと呼称されているわ。塔の放棄エリアで発生した亜竜には、突然変異で異常に強い個体が出現することがあるのね」
「ほほう、つまりはボス敵ということじゃな。今回、仕入れてきた情報というのは、こやつのことか?」
「ふっふっふっ、データベースにアクセスした収穫はこれだけじゃないわよ。こちらもご覧になって」
「これは海竜レヴィアタン。詳細は不明だけど、やっぱり変異種の一種かしら」
「名前といい見た目といい、泳ぎが得意そうじゃな。相手のフィールドで戦われたら厄介そうじゃ」
「疑問。データベースでも。詳しいことは分からないのか」
「皇国でもかなりの機密らしくてね。ガードが堅いのよ。おかげでかなり危ない橋を渡ったわ」
「それで遅刻したのじゃな。ならば新情報はまだあるのじゃろう?」
「もちろんっ。次のはすごいわよー!」
「おぉっ、これは……!」
「刮目。人型の装甲。これは黒い人竜ではないか」
「そうじゃな、見た目の雰囲気がリベリオとよく似ておるのじゃ」
「どうやらこの黒い人竜はアベンジャーと呼ばれているみたいね。リベリオ<叛逆>とアベンジャー<報復>、両者の関係が大いに気になるところだわ」
「正体。リベリオはカイルが変身するが。アベンジャーはどうなのか」
「アヴェンジャーにも中の人がおるのかのう? いるとすれば敵か味方か、気になって一日10時間くらいしか眠れなくなりそうじゃ!」
「ええ、この姿には恐らく意味がある。アベンジャーがリベリオと同等の性質を有する、進化する竜だとすれば、恐ろしい存在になりそうだわ」
「人竜。白と黒。両者が出会うと何が起こるのか。ただでは済まない予感」
「そうね……あっと、いけない! みんなを待たせているんだった。もう行かないと!」
「なんじゃ、今回は慌ただしいのう。もう行くのか」
「ごめんね、この埋め合わせはするからー!」
「出発。さっさと車両の乗り込んで。行ってしまった」
「うむ、行ってしまったものは仕方ない。おや、これを見よルナ。シャーリーが画像データをひとつ忘れていったようじゃぞ」
「拝見。黒ずくめのスーツを着込んだ。女性が映っている。というかこれは」
「シャーリーではないか? 顔は瓜二つじゃ。しかし雰囲気はまったく違うのう。なんというか冷たい感じなのじゃ」
「分析。コードネームはθ<シータ>とある。確かシャーリーのレガリアもθ<シータ>だったはず」
「とすれば無関係とは思えんのう。黒い人竜といい、謎は深まるばかりなのじゃ」