「ふっふっふ、ルナよ、今年もこの日がやってきたのう!」
「疑問。二月十四日。一体何の日だったか」
「なんと!? ルナともあろうものが、今日のこの日を忘れてしまったとは!! 今日は、チョコレートの日じゃ!!!」
「訂正。チョコレートの日ではなく。正しくは。バレンタインデー」
「はて、そうとも言うんじゃったか。
そんなわけで、今年もチョコレートをもらう旅に出ようと思うのじゃが、ルナはどうする?」
「甘味。仕方ない……私もついていこう」
楓「さて、不思議な力でやってきたここはいったいどこじゃ?」
ルナ「周囲。見覚えのある三姉妹がいる。どうやらここは。ウトガルド帝国」
ヘル「む? お前たちは……確か昨年もここに現れたな」
フェンリル「さては、今年もチョコレート貰いに来たのねぇ?」
ヨルム「2年連続でねだりにくるなんて、貧乏くさい連中!」
楓「がーん! 一応これでも神様なのじゃぞ! 貧乏臭いとは失敬な!」
ルナ「説明。楓は意地汚いだけで、貧乏なわけではない」
ヘル「ほらヨルム、見た目だけで相手を貧乏などと貶めるのはいけないぞ」
フェンリル「そうよ? 見た目が貧乏でも、股間にすごいものを持ってたりするかもしれないんだからね?」
ヘル「…………」
楓「…………」
ルナ「…………」
ヨルム「フェンリルおねーちゃんが頭おかしいのはともかく! アンタらみたいな意地汚い連中は、これでも食べてさっさと帰りなさいよっ!!」
楓「おおっ!? これはまさか!!」
ルナ「疑問。少しいびつで真っ黒こげの。なにか」
ヨルム「なにかってなによ! どうみても、手作りのチョコレートクッキーじゃないの!」
フェンリル「まっ。ヨルムちゃんたら、もうそんな風に色気づく歳になっちゃったのね」
ヨルム「ちっ、ちがうもん! 自分で食べようと思ってつくってみただけだもん! このあたいが、みんなに食べて欲しくて焼いてきたなんてわけないじゃない!!」
楓「まあ、そういうことにしておくのじゃ! とにかく黒こげ、ゲットなのじゃ!」
ルナ「入手。ヨルムお手製チョコレートクッキー」
楓「はてさて、次はどこじゃ?」
ルナ「どうやら。ここは。フィーリアス。フリードの居城」
ラググ「ジルニトラ様、そろそろ魔族の勉強会の時間でスよ……ん?」
ジルニトラ「……どうやら。異世界からの客人らしい。何の用だ?」
楓「さすがに叡智の竜神は話が早いのう。実はバレンタインチョコを貰いに来たのじゃ」
ジルニトラ「バレンタインチョコ? それは一体、どういうもの?」
ルナ「説明。かくかくしかじかで。甘くて。美味しいチョコレートを貰う日」
ラググ「チョコレートでスか? さすがにここにはそんなものはないですぜ」
ジルニトラ「問題ない。ラググ。今すぐここに、チョコレートとやらの材料を持ってきて」
ラググ「えっ!? 今ここで作るんでスかい?」
~数刻後~
ジルニトラ「……完成。私にかかればこの程度、造作もないこと」
ラググ「なんかグツグツ煮立ってまスが…」
ルナ「灼熱。香りは確かに。チョコレートのような気もしないでもない」
ジルニトラ「特性の魔法鍋で作っている。これならば一週間は温度を保つことができる」
楓「お、おう……」
ルナ「入手。ジルニトラ特製の。灼熱のチョコレート鍋」
楓「で、次は……む? またどこかの城の中のようじゃな」
キルト「ふむ、雌狐と雌猫か。たまには魔物を含めて4人で楽しむというのもいいな」
シャナン「どうしてそういちいち発想がいやらしいのですか……。ルキナも大変ですね」
ルナ「状況。どうやらここはグリザーニの居城。キルトとシャナンの。浮気現場」
シャナン「違います! ルキナを待っているだけですから!」
楓「まあ浮気だろうが待ち合わせだろうがどっちでも良いのじゃ。さあ、チョコレートを寄越すがよい」
シャナン「寄越せといわれても、さすがに手持ちがないものはどうしようも……」
キルト「いや、問題ない。ここにある材料を使えば、本物と見まごう偽者ならいくらでも作れるぞ?」
ルナ「偽物。……まあ。食べて美味しければ問題はない」
シャナン「ちょっと……大丈夫ですの?」
~数刻後~
楓「うぉぉぉ、どこからどうみても市販の板チョコじゃ!!」
シャナン「ええ、まあ。チョコレートといえばチョコレート、ですがこれは……」
キルト「魔界カカオの粉末に、乳竜のミルクを使った本格派だ。オマケに、リリシアの愛液入りだから獣人には効き目抜群だ」
楓「なぬ?」
ルナ「効果。三日三晩発情。雄の獣の場合は。匂いを嗅いだだけでも発情。らしい」
シャナン「すみません、必死でとめたのですが」
楓「ま、まあ良い、とりあえずは袋に入れておけば問題なかろう」
ルナ「入手。魔界の板チョコ(リリシアの愛液入り)」
楓「ううむ、そろそろマトモなチョコレートが欲しいのう」
ルナ「場所。次はどうやら。ロッサム工房」
C・ママ「ビガー、ビガビガ、ビガー」
ファム「ママさんすごーい! さっすが師匠だね!」
楓「ほほう、ここは普通に台所で作っておるぞ! 期待できそうじゃ!」
ルナ「疑念。あのドラム缶がいる時点で。普通と言えるのか」
楓「細かいことを気にしておっては、マスコットなどやってられんからのう」
ファム「私も、去年はちょっと失敗したけど、今年はママさんに手伝ってもらって、美味しいの作れたよ!」
C・ママ「ビッガビガ、ビガビーガガガー」
ファム「えへへ、もうジェノサイドとか言わせないんだから!」
ルナ「成長。被害者が減るのは。素晴らしいこと」
ファム「あ、でも、キチンと出来たのはおとーさんにあげるから、2人にはこっちのあげる! 去年の失敗作! 冷凍しておいたの!」
楓「……のうルナよ、わしの気のせいだと良いんじゃが、箱の中で何か動いておる気がするのじゃが?」
ルナ「周到。冷凍してまで保管してあるのは。私たちに対する挑戦としか」
楓「ま、まあ、もらえるものはありがたくもらっておくのじゃ!」
ルナ「入手。ファムの失敗作(去年の)」
楓「む、ここも前にきたことがあるぞ。
珍大陸エロシュインならぬ、新大陸エリュシオンじゃな」
ルナ「場所。マリーシア市。どうやらここは。『酒場プレシャス』」
ジャスミン「いらっしゃい……って、見たことないお客様ね」
フィリア「あれ? もしかしてあなたたち、前にお年玉を貰いに来た子たち、かな?」
楓「おう、正月ぶりに見る顔じゃな。実は今回はチョコレートを貰いにきたのじゃ」
ルナ「説明。かくかくしかじか」
ジャスミン「ふうん、そんな風習があったのね。だったら、うちの店でもチョコレートを大々的に売り出せば良かったわ」
フィリア「ね、だったら今から私が作ってみてもいいかな?」
ジャスミン「え゛……っ」
ルナ「無論。バレンタインは。手作りチョコのほうが。価値が高いもの」
楓「なにやら今日は、手作りチョコ率がやたらと高いのう」
ジャスミン「だ、大丈夫かなあ……」
~数刻後~
ルナ「解説。紫色と緑色の混ざった。よく分からない物体が。湯気を立てている」
楓「こ、これは何とも……面妖な」
フィリア「き、きっと見た目は失敗しちゃったけど、味は大丈夫だよ! HPもMP全快するから!」
ジャスミン(最初から私が作ればよかったかなあ)
楓「ま、まあよい。手土産として、おにーあたりに食わせることにしよう」
ルナ「入手。フィリア・ジェノサイド」
ルナ「帰宅。本日の収穫は?」
楓「黒こげの物体。煮立った鍋。リリシワの愛液チョコ。ファム・ジェノサイドにフィリア・ジェノサイド……の五つじゃな」
ルナ「…………」
楓「…………」
おにー「お、なんか美味そうなもの持ってるじゃねえか。よこせ」
ルナ「是非。これは皆からの。心づくしのチョコレート」
楓「一点の曇りもなく言ってのける辺りがすごいのう、ルナは……」
おにー「どうれどれ……おや、どうして目隠しをするのかな? かなかな?」
ルナ「遊戯。目隠しをして。誰のかを。当てるのも一興」
楓「……すげえ、完全に殺る気なのじゃ。おっかねえのじゃ」
おにー「ああ、こういうイベントも良いよネ。ちょっと背筋寒くなってるような気もするけど」
ルナ「特別。私が。手ずから食べさせてあげる」
おにー「あっれ、何か今日のルナは優しいなあ! わはははは!」
楓(ガタガタ……)
~閑話休題~
楓「さてルナよ、2つ目にして、おにーが不思議な色の液体を吐いてぶっ倒れたんじゃが」
ルナ「不運。運が良ければ。キルトのに当たったのに」
楓「その場合は、獣と化したおにーに、わしら襲われておったと思うんじゃが」
ルナ「幸運。私たちの。日頃の行いが良い証拠」
楓「そういうことにしておくかのう。さてわしらは、金目鯛ぴんくさんの送ってくれた、美味しそうなチョコクッキーを食べるとするかのう!」
ルナ「賛成。そうするべき。お茶ははやてに淹れさせる」
楓「うむ! それでは皆も、紫色やうじゅるうじゅる動くチョコレートに気をつけるのじゃぞ!」
ルナ「希望。皆が普通のチョコをもらえるように。祈っている」
おにーが食べなかったチョコはユーザープレゼントですね、わかります。
応募の宛先はどこですか?
なんだろう、普通なら凄く羨ましいはずなのに憐憫しか浮かんでこないです(苦笑
乳竜・・・アルマさんですね、わかります。
(o_ _)o..ぽけめそ
それぞれ人気投票により抱き枕が作られた方々のチョコレート
普通ならば、かなりうらやましいはずなのに ・・・・ あまりうらやましくないのは何故でしょうか
おにーが死んだ…
キルト&シャナン作の板チョコは偽物ですらなかった
ジルのは正直うらやましい。。。(涙)
そして乳竜についてkwsk