キャラクターインタヴュー第7回「マウザー&ヴァネッサ」

【ロスター】「はぁ、とんでもない役目を仰せつかっちまったな。フラグメンツのメンバーへのインタビューは一通り終わったから安心していたのに……」


【マウザー】「貴様、何をブツブツ言っている? この私がわざわざ出向いてやったのだぞ」


【ヴァネッサ】「人を呼びつけておいて上の空なんて、不躾ではないかしら。私も暇ではないのだし、早く紹介を始めて頂戴」


【ロスター】「わ、悪い! えっと、今日のインタビューは今までと趣向を変えて、この2人に来てもらっている」


【ロスター】「1人目は機械ギルドの実力者。類稀な機械適性で、カルナスに来て短期間で頭角を表したライオネル・マウザー少佐だ」


【マウザー】「紹介に与った、ライオネル・マウザーだ。都市国家に機械技術を根付かせ、新たな文明の光を灯すため日々精励している」


【ロスター】「そしてこちらはヴァネッサ・アンブローン。魔法ギルドの重鎮にして、カルナスきっての名門アンブローン家の現当主として知られている」


【ヴァネッサ】「ごきげんよう。市井の者にも慕われ、敬われる姿こそ、貴族の誉れと考えているわ。今日はよろしくね」


【ロスター】「というわけで、奇しくも機械と魔法、両ギルドの大物が揃ったわけだが……」


【ヴァネッサ】「クス、やりにくそうね」


【マウザー】「まあ分からんでもない。我が機械ギルド『アバランチ』と魔法ギルド『ペンタクル』は迷宮探索と都市運営を巡って鎬を削る競争相手だからな」


【ヴァネッサ】「でもそう気を遣う必要はなくてよ。いくら対立関係にあるからといって、いきなりケンカを始めないくらいの分別は弁えているもの。そこの軍人崩れの野蛮人は分からないけれどね」


【マウザー】「安い挑発だな、牝狐。お抱えのブン屋に針小棒大の記事を書かせるつもりだろうが、その手には乗らんぞ。我らは貴様ら驕り昂ぶった貴族と違い、紳士を心がけているからな」


【ヴァネッサ】「あら、それは安心ね。そんな物騒な義手をつけて、いつ暴力に訴えるかはらはらしていたけど、一応お話はできそう」


【マウザー】「ハハハ、そういうことだ。貴様もどこに兵を潜ませているかと思ったが、意外にその気配もない。殊勝なことではないか」


【ヴァネッサ】「フフ、どう、ロスターさん? 友好的で有意義な集いになりそうでしょう?」


【ロスター】「……そうみたいだな」

【ロスター】(帰りたい……)

【ロスター】「コホン、気を取り直して……。早速質問タイムに移らせてもらおうか。まずはマウザー少佐から、問題ないか?」


【マウザー】「無論だ。始めたまえ」


【ロスター】「ああ。じゃあまずは一番多かった質問から」

【ロスター】「ロケットパンチとドリルとパイルバンカーはどこについているんですか?別売りですか? ぶっちゃけそのアームでエロいことするんですか? 阿修●バスターは放てますか?」

【ロスター】「……などなどマウザー少佐の最も特徴的な戦闘義手への関心が寄せられていた」


【マウザー】「ふははっ、皆、我がヘカトンケイルに興味津々のようだな!」


【ロスター】「その義手はヘカトンケイルっていうのか?」


【マウザー】「ああ、このカルナスに来て、手に入れたものだ。まったく機械技術は素晴らしい。私はこの都市に来て、新しい腕と力を手にすることができた」


【ロスター】「機械技術は今までできなかった様々なことを可能にする。少佐のようにそれで希望を得た者も少なくないだろうな」


【ヴァネッサ】「中には分不相応な力を得て、自滅する愚か者もいるでしょうけどね。それでロケットパンチとかパイルバンカーというのは何なのかしら?」


【マウザー】「そんなことも知らんのか。賢者を気取りながら、無知な女め」


【ロスター】「ロケットパンチっていうのは、こう腕を飛ばしてだな……。パイルバンカーは相手に密着した状態で発動して、杭で装甲を貫いたり……」


【マウザー】「ロスター・フラッド。つらつらと説明する必要はない。ただこう言えばいいのだ。男のロマンとな。HAHAHA!」


【ヴァネッサ】「付いていけないわ」


【ロスター】「では次の質問。仲間になりますか? それともやっぱりボスポジションでしょうか? 竿男としては期待できたり?」


【マウザー】「フム? 質問の主旨がよく分からんな。つまりは貴様との関係を問われているのか?」


【ロスター】「そのようだな。俺達のチームに参加するかどうか、とか」


【マウザー】「それを言うなら、むしろ逆だろう。貴様らのチームはそこそこ有能のようだから、その気があるなら我が隊で使ってやってもよいぞ」


【ロスター】「とまあ、こういうスタンスらしい」


【マウザー】「ちなみに女のあしらいも得意分野と言っておこう。私のコックに泣かされた娘は数知れずだ。HAHAHA!」


【ヴァネッサ】「癇に障る笑いね。品性が知れるわ」


【ロスター】「……次の質問だ。元は別な国の軍人だったそうですが、別な国には重火器とかの機械技術ってあるんですか?」


【マウザー】「私はウルバルト公国にて仕官をしていた」


【ヴァネッサ】「ここカルナスから遥か北に位置する国ね。文明はずっと遅れているようだけれど」


【マウザー】「事実だな。周辺国との泥沼の戦争が長引き、多くの戦災孤児や難民で溢れている。装備は貧弱で、カルナスに比べれば数世代は昔の原始的な銃剣の類が使われていた」


【ロスター】「大陸の事情を鑑みれば、カルナスほど高い水準を保った国家はむしろ稀だからな」


【ヴァネッサ】「後進国から見れば、迷宮遺跡から発掘される古代機械技術はさぞ魅力的に映るのでしょうね。それで流れ者が大きな顔をしてのさばっているということかしら」


【マウザー】「迷宮遺跡のロストテクノロジーが解明されれば、世界の歴史が変わる。危険を冒しても挑む価値はあるというものだ。なあ、探索者よ」


【ロスター】「俺はそんなことのために探索者になったんじゃないんだけどな……」


【ヴァネッサ】「ロスターさん、私にも質問してくださらない? その男にばかり話を振っていたら、きな臭くなって仕方ないわ」


【ロスター】「あ、ああ、そうだな。じゃあ続いてミス・アンブローンに質問タイムだ」


【マウザー】「フン、牝狐め。せいぜい本性が出ぬよう、気をつけた方がよいぞ?」


【ヴァネッサ】「ご忠告痛み入るわ。貴方の方はあまり隠せていないようだったけれど」


【ロスター】(やっぱりやりにくい……)

【ロスター】「えっと、じゃあまずは無難な質問から。自称天才のヴァネッサ様ですが、得意な魔法はありますか?」


【ヴァネッサ】「そうね……私の一族は水晶を触媒にした魔法奥義を得意としているわ。一言に水晶と言っても、それでどんな効果を及ぼすかは術式を操る人によって違ってくるのだけど……」


【ロスター】「ヴァネッサの場合はどういう魔法なんだ?」


【ヴァネッサ】「封印系かしらね。あまり詳しく話すことはできないけれど、この分野で右に出るものはいないと自負しているわ」


【マウザー】「フン、ここでも貴族どもの秘密主義が罷り通っているというわけか」


【ロスター】「仕方ない。術式の詳細を明らかにすれば、悪用する者が出てこないとも限らないからな。じゃあこれについてはどうだ?」


【ヴァネッサ】「なにかしら?」


【ロスター】「魔法ギルドって肌出してるの多いけど露出するの大好きな人ばっかなの?……と俺じゃなく質問者からの声がな」


【ヴァネッサ】「わざわざ補足しなくても、この程度で機嫌を損ねるほど狭量ではないわよ。下々の者は卑俗なものだもの」


【ロスター】「そう言ってもらえると助かるが、実際のところは?」


【ヴァネッサ】「そうね、露出が好きというよりは、私の美しさを多くの人に見てもらいたいというのが本当のところかしら」

【ヴァネッサ】「私の美しさを引き立てる衣装が、このドレスだったというだけのことよ」


【マウザー】「フン、抜け抜けとよく言う。腹の中はどす黒いくせに、純白のドレスなど纏っているのだからな」


【ヴァネッサ】「心外ね。貴方はもっと外見に気を遣った方がいいのじゃなくて? いつもそんな軍服では、市民に威圧感を与えるばかりだわ」


【マウザー】「何を言う! 私と私の隊は、市民の規範たるべく秩序を……」


【ロスター】「ストップ。話がずれてきているぞ! とりあえず、魔法ギルドが露出好きというわけじゃないってことでいいんだな?」


【ヴァネッサ】「当然よ。まあ中には魔素の流れを感じ取りやすくするため、薄着にしている者もいるけれどね」


【ロスター】「なるほどな、分かった、参考になったよ。じゃあ次の質問。魔法ギルドはフェザーリアが幅を利かせているようですが、エルフがフェザーリアより秀でていることってなにかあるんですか?」


【ヴァネッサ】「……これは詰まるところ私が、フェザーリアであるクロノス様の下風に立っていることを言っているのよね?」


【ロスター】「い、いや、一概にそういうわけじゃないだろうが、確かにクロノスとの関係を尋ねる質問も他に来ていたな」


【ヴァネッサ】「あえて種族的な違いに言及するなら、マギウスの出生率の違いがあるでしょうね」


【ロスター】「どういうことだ?」


【ヴァネッサ】「エルフは優れた魔法の素養を持っているけど、稀に素質をまったく持たない無能者が生まれてくるの。対してフェザーリアは魔力を操って飛行するという特性上、すべてがマギウスと言われているわ」


【ロスター】「フェザーリアの方は例外なく魔法を使えるんだな」


【ヴァネッサ】「でも魔法奥義への探究心はエルフの方が上よ。これは主観ではないわ。近年発表された術式研究の成果は、その多くがエルフによるものなの」

【ヴァネッサ】「フェザーリアが種族的な優位に胡坐をかいている間も、エルフは着々と叡智を築いているというわけ」


【ロスター】「やっぱり一口に魔法ギルドとかマギウスって言っても、色々あるんだな」


【マウザー】「私には関係ない話だな。せいぜい派閥争いに汲々としていればいい」


【ロスター】「じゃあ今度は切り口を変えて、ヴァネッサのプライベートを。 魔法貴族の当主だというヴァネッサ様ですが、まだ独身なのでしょうか? 既に夫がいたり、または婿を迎えるという予定はありますか?」


【ヴァネッサ】「私はまだ独り身よ。婿を迎える予定も今のところないわね」


【マウザー】「手遅れにならなければよいがな。いや、むしろもうなっているか?」


【ヴァネッサ】「勘違いしてもらっては困るわね。縁談はいくらでもあるのよ。でも私の夫になる人なら、然るべき血筋とふさわしい魔法奥義を修めた人でなければいけないの」


【ロスター】「ヴァネッサのお眼鏡に適うのは大変そうだな。それに尻に敷かれる未来が見えてる」


【マウザー】「なんだ、やはり行き遅れ確定ではないか」


【ヴァネッサ】「……っ、しつこいのはコンプレックスの裏返しかしら? そんな義手をつけて、機械人形を信奉しているのだから、まともな結婚は絶望的ですものね」


【マウザー】「貴様、エキドナを人形と言ったか! 許さんぞ!」


【ロスター】「おい、よせって。紳士でいくんじゃなかったのか?」


【ヴァネッサ】「ロスターさん、悪いけどそろそろ潮時のようね。私もこれ以上、彼と語らうのに嫌気が差してきていたのよ」


【マウザー】「フン、そこだけは気が合うな。ギルド間の対話ならともかく、プライベートにまで踏み込む意義など私も認めん」


【ロスター】「はぁ、やっぱりこうなったか。まあ長く持った方かな」


【ヴァネッサ】「ロスターさん、最後に言っておくわ。付くなら魔法ギルドになさい。マウザー少佐のような野蛮人に与しても、いいことはないわよ」


【マウザー】「何を言う! 魔法ギルドにこそ未来はない。次代は我ら機械ギルドが担うのだ!」


【ロスター】「ま、まあ双方に言い分があるってことで。皆はどの勢力に味方するか、しないのか、慎重に決めてくれ。それじゃまた会おう!」